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ニュートラルな気づき 


by honnowa
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源氏物語絵巻 『橋姫』と『宿木三』の関係 1

昨日08/01/12の記事のつづきです。

『橋姫』ではお顔を出しているのが、二人の女君です。
でも姫君ですから、完全に出すのではなく、袂で口元を隠し、嗜みが仕草でわかりますね。

さて、一人は庭に近いほうで琵琶を弾き、もう一人は奥で箏の琴を弾いています。
どちらが大君(姉)でどちらが中の君(妹)かというと、物語上では、琵琶を習っていたのは大君で、箏を習っていたのは中の君です。
しかし、昨日の記事の円地文子訳の引用を読んでいただけるとわかるとおり、琵琶を弾いているのは「大そう可憐で匂いやか」、箏を弾いているのは「ひときわ重々しく嗜み深げ」とあります。
そして絵巻でも確かにそのように、琵琶の姫は可愛らしく、箏の姫はしっとりと描き分けています。
実は物語の中で二人のキャラクター設定ですが、「大君は何事にも賢しく思慮深く、重々しくお見えになる。中の君は大様にあどけなくて、はにかんだ御様子などもいかにも可憐で、御姉妹それぞれに特徴がおありになる」(P331)と区別されています。
宇治十帖で、この姉妹の性格の違いは重要なポイントです。
なぜなら、大君はこの性格ゆえに薫を拒み続け、薫は大君のこの性格ゆえに惹かれるのです。
そして中の君はこの性格ゆえに正妻を持った匂宮の心を繋ぎとめることができ、匂宮も中の君のこの性格と愛嬌のよさゆえに、離れることができなかったからです。

そこで『源氏物語』のこの場面の記述は、失礼ながら式部の勘違い?、または模写した人の筆の誤り?かなという気がしなくもありません。
そこまで深読みしなくても、たんに自宅で寛いでの合奏場面ですから、たまたま楽器を取り替えて演奏していたということでもよいでしょう。
「なにぶん霧が深いので、内の様子はそうはっきりと見えようもない」(P346)のですから。

この取り違えは物語のほうを読むと多少混乱するのですが、絵画的には逆にうまくいっているようにみえます。
というのも『橋姫』の琵琶を弾く女君と『宿木三』の女君のお顔が、たまたま似ているのですね。
衣装も白く似てますし、そばにある楽器も琵琶です。
現在の研究では『源氏物語絵巻』は5つの制作グループによって作られているそうで、『橋姫』と『宿木三』は別のグループに属します。
ですから繋がりを感じるのは、わたしの思い込みなのですが、でもなんとなく、おおもとのプロデューサーが、うまくまとめたかなという気がしてなりません。
このあたりは専門家の文献にあたっていないので、まったくの私見ですけど。

ただわたしにこのように勘ぐる理由が2つあるのです。
長くなりましたので、この続きはまたあした。
by honnowa | 2008-01-13 07:20 | 美術