モネ「印象 日の出」展 講演会 1
2009年 02月 01日
講師は大原美術館館長の高階秀爾先生です。
高名な先生ですし、しかも先着順とあって、当日は大変な混雑ぶりでした。
このごろの美術講演会やギャラリートークは混むんですよね。
定年を迎えて時間に余裕のできた方々がご夫婦連れで、という姿を多く見かけます。
世間の美術を愛好する傾向が強まるのはいいことですね。
でも講演会の競争率が高くなりそうです。
いや、それでもいいことですよ。
講演では特に色彩について、わかりやすく解説してくださいました。
色と光の3原則とか初歩的なお話ばかりだったのですが、本で読むのと違い、先生が話されると、ああ、なるほど、とあらためて気づかされることが多くありました。
幾つか挙げますと、
・従来の絵画では影は黒かった。白から黒の間の色を加えて明暗をつけた。
印象派たちは画面を明るくするために陰影をつけなかった。または影にも色があることに気
づき、灰色をやめてブルーなどにした。
・色は混ぜると黒くなる、暗くなる。
印象派たちはパレットで色を混ぜずに、色を画面上に並べて、目が色を混ぜて見るように
した。
・ある部分に赤味がほしい場合、色を混ぜないので、隣に赤色を並べて置くことになる。よっ
て形が崩れやすい。だから形がないもののほうが描きやすい。
印象派が水面や大気や雲などを得意としたのは、そういう技術上の理由もあるのですね。
印象派たちが絵具を混ぜないようにするために行った、筆のタッチを残す塗り方を筆触分割としたのに対し、従来のアカデミックな描き方は、筆の痕を残さないようにし、それが上手な絵ということになっていました。
ここで先生は例としてダ・ヴィンチの『モナ・リザ』をスライドで拡大して見せてくださいました。
77cm×53cmしかない『モナ・リザ』の目元や口元部分だけを、2畳ほどに拡大したのですが、まったく筆跡がない。
印象派以降のタッチのある絵に慣れている目からすれば、それはそれであらためてレオナルドの凄さを知ることになりました。
逆に印象派たちは、そういうことをしなくても絵=美は成立することを証明したということになるでしょうか。
アカデミックな画家たちも、宝石の輝き、食器や果実の光沢、陽光、松明の炎など、光るものを描くことはできました。
しかしそれは絵の中の一部分です。
背景を暗くしたり、薄暗い室内を周りに描いて、その明暗の対比で、明るいものを明るく見せていました。
印象派の画家たちが行なったことは、新しい技法で、絵全体を外の景色と同じくらいに明るく描いたことです。