ニュートラルな気づき 


by honnowa
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2007年 04月 24日 ( 1 )

  『源氏物語図屏風』(図録№5) 作者不詳
    http://d.hatena.ne.jp/jakuchu/20060620/p2

源氏物語をテーマにした絵はたくさんありますが、この絵はそれらとは描き方で少し異なる印象を与えます。
桃源郷を思わせる金雲たなびく庭に主に描かれているのは、長い渡り廊下です。
六曲の屏風は横347.4mmで二隻(一双)あります。
春の屏風は対角線に描かれ、秋の屏風は水平ですが、途中折れ曲がって段をずらして続いているので、さらに長く見えます。
画面の端に寝殿の屋根だけが見えるので、この渡り廊下はどこに続いていくのだろうと、目が追っていくことになります。
しかし建物の全容は雲に隠されているので、何があるやらわからず、夢幻の世界をさまよってしまうのです。
その中で小さく描かれたたった三人の人物を見つけることができます。
春の屏風では、顔を扇で隠した女性が左上から、それに対し右下から渡ってくる男性。
秋の屏風は、季節の紅葉や菊の花などを載せた盆を運ぶ女童。
源氏物語で春秋とくると、紫の上と秋好中宮の春秋の争いとなるわけですが、この屏風はどうもそれらしくありません。
秋の方は、中宮から紫の上への使いとわかりますが、春の男女は一体・・・
わたしの源氏の知識はここまでなので、後は解説に頼りますと、春の場面は『花の宴』における光源氏と朧月夜の君の出会いの場面なのでした。

この二人は突然、ばったりと出会い、恋に落ちます。
物語に登場する他の女性たちが、もともと繋がりがあったり、意図的に逢おうとした結果であるのとは対照的です。
さて場面がわかってからあらためて絵を眺めると、確かに墨色の月が。
この月と、満開の桜と、渡り廊下、そして女性の顔を隠す扇、これらから『花の宴』の場面と、わかるようになっているのですね。
扇で顔を隠すというのは平安女性の嗜みで特別なことではないのですが、この出会いのあと、あわただしく二人は扇を交換して別れるため、この絵では意味のある描写なのです。
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by honnowa | 2007-04-24 06:06 | 美術