ゴッホの『タンギー爺さん』と浮世絵 3
2008年 07月 16日
※ 記事中の作者名、作品名はすべて引用資料に準じています。
せっかくですから、『タンギー爺さん』の背景にある他の5つの浮世絵も観てゆきましょう。
3つの絵は原画が特定できています。
浮世絵の画像は下にまとめました。
右上の桜の絵は、歌川広重『五十三次名所図会 石薬師(いしやくし)』・・・①
この絵はゴッホも所蔵していました。
人物と鳥居が省略された以外は、よく写してあります。
桜咲くのどかな田園風景です。
場所は現在の三重県鈴鹿市。
広重は『東海道五十三次』でも『石薬師』を描いてますが、まるで雰囲気の違う絵です。
右下の花魁は、渓斎藤英泉の『雲龍打掛の花魁』です。
この絵は『パリ・イリュストレ』という週刊誌の日本特集号(1886年)の表紙に使われました。
ゴッホはこの表紙をトレーシングペーパーで原寸大に写し、拡大して油彩画を仕上げています。・・・②
そして、『タンギー爺さん』の背景にももう一度描いたということのようです。
左側中段、初代歌川国貞(三代豊国)の『三世岩井粂三郎の三浦屋高尾』・・・③
これは役者絵です。
『ゴッホが愛した浮世絵』 (NHK取材班 日本放送出版協会)によると、ゴッホは400枚もの浮世絵をコレクションしており、その1/3以上を占めるのが三代豊国だったそうです。
「三代豊国は美人画を得意とする江戸末期随一の人気絵師で、残した作品数は浮世絵史上最多の一万点をゆうに越すという多作家である。初代に比べて値段のほうも求めやすく、ゴッホが数多く所有できたのもうなずける」(P70)わけなのです。
残り2つの作品はまた明日。
《参考画像》
①『ちばとぴ』様 > 文化 > アートウォーク
> 『広重の竪絵 東海道第2期23日から茂木本家美術館』
(http://www.chibanippo.co.jp/_culture/art/080416index.php)
原画の画像が見つからなかったので、ゴッホが模写した油彩画の画像です。
②『東京国立近代美術館』様 > 過去の展覧会情報 >
ゴッホ展 : 孤高の画家の原風景 : ファン・ゴッホ美術館/クレラー=ミュラー美術館所蔵
> 第3章 闇から光へ(パリ)
③『山口県立萩美術館・浦上記念館』様 > 収蔵作品検索システム > 浮世絵 >
『三世岩井粂三郎の三浦屋高尾』
(http://www.hum.pref.yamaguchi.jp/seek/cgi-bin/index_2.idc?nu=U05005)