人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ニュートラルな気づき 


by honnowa
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

『若冲と江戸絵画』展より 気に入った作品18

ようやくこのシリーズの最終回です。
(展覧会のほうがとっくに終わっているというのに)
最後を締めるのは鈴木其一です。
展覧会で絵を観た瞬間にブログに何を書こうか決めていたのに、いざ調べだすととんでもない大テーマだったことがわかり、後回しにずらしてついにエンディングを飾ることになってしまいました。
でも今日ここに書くのはとりあえずの、ほんの端切れです。
其一から酒井抱一、尾形光琳、俵屋宗達へとさかのぼる、江戸琳派調べの端緒になってしまったからなのです。

  『群鶴図屏風』(図録№101)  鈴木其一(すずききいつ)
    http://d.hatena.ne.jp/jakuchu/20060701/p1


この絵を観て、加山又造がこんな絵を描いていなかったかしら?と思った人、手を挙げて。
は~い。
流水の描き方が、光琳の『紅白梅図屏風』みたいと思った人は?
は~い。
わたしのように思った方、本当かどうか一緒に検証しましょう。

まず加山又造の画集を観てみます。
『群鶴図』ありました。
1988年(昭和63年)の作品です。
背景はプラチナ箔無地、丹頂鶴が左隻、右隻、それぞで十数羽づつ描かれています。
ごめんなさい、こちらの画像みつかりませんでした。
わたしが見ている本は『現代日本画[11] 加山又造』 (学習研究社) で、『自作によせて』と題して加山氏ご本人のコメントも収録されているので、この絵についての文章を一部引用しましょう。

   丹頂鶴の白と黒の鮮やかで単純なコントラストの中に、紅の一点はいかにも美しく、日
  本人の美感覚に非常に合致している。
   江戸時代、酒井抱一に真鶴のなかなか美しいコンポジションの群鶴図がある。私もいつ
  かは、群鶴図を丹頂鶴で描いてみたいと思っていた。

ここで酒井抱一の名が出てきました。
では加山又造が参考にした抱一の『群鶴図』とはどんな絵でしょうか。
その二曲1隻の屏風は現在、アメリカ東部のウースター美術館が所蔵しています。

 『Worcester Art Museum 』様 『Japaneas Art 』より 
    酒井抱一 『群鶴図屏風』


残念ながら英語なので、この絵についての説明ができません。
そこでこの抱一の絵が出展された名古屋市博物館の『特別展 琳派  美の継承──宗達・光琳・抱一・其一』 (平成6年4月23日~5月22日)の図録の解説をお借りします。

  鶴の群れを横一列に並べる光琳落款の六曲一双屏風がフリア美術館などにあり、本作
  品の図様は、それからの左隻中央部を反転したものにほぼ等しい。羽毛や顔などの描き
  方も光琳周辺作に忠実であるが、本作品で目を奪うのは、個々の描写の美しさである。

さてそこで今日取り上げたプライスコレクションの其一の絵に戻りますが、図録の解説には次のような記されています。

  琳派における型(パターン)の継承とその変装が見出せる作品である。真鶴の図案化した
  姿態を横に一列に並べる作品は、光琳が生み出した作品として、中野其明篇『尾形流百
  図』やフリア美術館のものにみられ、ウースター美術館所蔵の作品で知られるように師の
  抱一も試み、其一も写し継いだ。しかし、従前の鶴図と比べれば、鶴の羽や水流にみられ
  るように、色調を明るくして、鶴の形もより引き締まったものとなる。明快な形と色調を強調
  する其一の変奏がなされているといえよう。

では最後にフリア美術館の光琳の絵と観くらべてみましょう。
 
  『フリア美術館』様 『Japanese Art 』より 尾形光琳 『群鶴図屏風』

ちょっとだけ自慢してもいいでしょうか。
フリア所蔵の光琳の絵ですが、画集を何冊観ても図版が載っていませんでした。
その割には研究する上での資料的価値が高いとみえて、解説にはほぼ引き合いに出される絵なのです。
今回フリアのサイトで直接画像を探すことができましたが、サイト内検索で探せず、1700点以上もある日本美術コレクションのサムネイル画像をチェックして見つけました。
わたしってエライなあ(と自分を誉めよう)。
by honnowa | 2007-06-30 05:05 | 美術