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ニュートラルな気づき 


by honnowa
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『若冲と江戸絵画』展より 気に入った作品14

この作品は気に入ったというよりも気になった作品です。

  『一人立美人図』(図録№68)  懐月堂度辰(かいげつどうどしん)
    http://d.hatena.ne.jp/jakuchu/20060529/p1


リンク先から拡大図までたどってくださいね。
個性的な描き方ですよね。
たくさんの江戸美人の中にあっても、このお顔は印象に残りますよね。
それでわたしも少し前にこの絵をどこかで観たなあと思ったのです。

手持ちの図録をめくってみるとありました。
ちょうど一年前に名古屋ボストン美術館で行われた『江戸の誘惑』展によく似た絵が2点出展されていました。
(まだこのブログを始める前のことなので、どんな展覧会だったか紹介できなくて残念)
ボストンのほうの2点と較べても、お顔が同じ、着物の着こなしが同じ、着物の太い輪郭線、背景を描かない、とまったく同じ特徴でした。
ところが、ところが、3点とも作者が違うんですよ。
え~? なんで?
ボストンの2点は、懐月堂(重陽堂)安知(かいげつどう<ちょうようどう>あんち)と松野親信(まつのちかのぶ)。
それで両方の図録の解説を読むと以下のことがわかった次第です。

町絵師 懐月堂安度(かいげつどうあんど)が絵画工房懐月堂を主催し、商品として定型化された美人画を多く世に送り出した。
門人の安知(上記ボストン出展作)や度辰(今回の若冲展)らも師の様式に倣い、量産した。
そして同派の絵師のみならず、他の絵師にも流行の余波が及んだ。
松野親信は安度とほぼ同時期に活躍し、独自の画風の絵も描く一方、懐月堂様式の美人画も描いた。
懐月堂工房は一世を風靡したが、安度の流刑により短期間で終息した。

工房が短期間で終わっていなかったら、このお顔が江戸美人の典型になっていたかもしれませんね。
by honnowa | 2007-06-14 00:01 | 美術