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ニュートラルな気づき 


by honnowa
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藤澤紫 『名所にまつわる江戸文化』

タイトル    名所にまつわる江戸文化 ~絵を読む楽しみ・文化を知る楽しみ~
          (『東洋 第44巻 第2号』掲載)
著 者     藤澤紫
発行所     東洋大学通信教育部
発行日     平成19年5月1日発行
Cコード     なし (解説)
内 容     名所の八景ものの起こり、種類、影響など
動 機     掲載されていた図版の絵がよかったから     
私の分類   勉強
感 想     図版の絵に引き込まれてついつい読んでしまいました。
  どんな絵が掲載されていたかといいますと、
  ・ 葛飾北斎 『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』
  ・ 歌川広重 『名所江戸百景 浅草金龍山』
  ・   〃    『近江八景之内 石山秋月』
  ・ 歌川豊国 『名勝八景 玉川秋月』
  ・ 鈴木春信 『風流坐敷八景 鏡台秋月』
  ・ 歌川国芳 『熠武八景 五條秋月 牛若丸』
  掲載は残念ながらモノクロなんですよ。
  なのでカラー画像探しました。

鈴木春信は「八景もの」に「見立て」の趣向も加わったもので、その中でもかなり高度な趣向の例として紹介されています。
それは春信の後援者、旗本の大久保甚四郎忠舒(俳名 巨川)の依頼で私的に製作されたものだからです。
巨川は旗本でありながらも、俳諧の会を主催し、多色摺版画(錦絵、現在わたしたちが浮世絵と聞くと思い浮かべるカラフルな江戸時代の版画)開発の立役者でもある人物です。
ですから、「見立て」の絵の意味はわかる人にだけわかる、という類のものでした。
その説明を読んでいて、ふとボッティチェリを連想しました。
彼もパトロンであるメディチ家のために絵を描いたこと。
権勢家であるメディチ家は、一方で学芸のためのサロンを主催し、ルネサンス期の芸術の発展に大いに寄与したのですが、そのメディチ家のために描いた『春』は、サロンの人にだけ意味がわかるというものなのです。
しかも春信もボッティチェリも、絵そのものがきれいで、意味がわからなくても鑑賞して楽しめるものです。
わたしは鈴木春信の絵はこれまでも見たことはありますが、巨川の存在は知らず、まして二人が錦絵の開発者であることは今回はじめて知ったことなので、これからちょっと注目していこうと思います。

  鈴木春信 『風流坐敷八景 鏡台秋月』の画像はこちらをどうぞ

春信と巨川についてはこちらをどうぞ。
  『錦絵と印刷の世界』様の『カラー印刷の源流』より『錦絵の創始』
by honnowa | 2007-05-31 05:39 |