井上靖 詩『猟銃』
2007年 04月 19日
『猟銃』はその本の二番目に載っていました。
強い印象を残す詩で、この詩について何か綴りたいと思ったのですが、何日も考えながらもまとまらず、詩集の続きを読むこともできなくなり本を返しました。
短絡的な表現ですが、「悪の魅力」というんでしょうか。
人に言えない暗い過去、脛に傷を持つ寡黙な中年の男、陰に惹かれる子供や女。
(一昔の映画やドラマにこういうテーマの作品がいろいろありましたね)
でもどんなに惹かれても、そこに「人生の白い河床」が眩しく反射し、引き下がらねばならないことを知らせる。
男の闇が深いほど、河床は白く輝き、強い陰影を記憶に残す。
そして男はけして語らない。
それゆえ悪に美学があった。
人生の白い河床とは何か。
それを説明すればただただ陳腐になるばかりです。
言葉はさまざまな解釈を人に与え、詩はときとして読み手に真逆な感想を引き出したりしますが、散文で綴られた『猟銃』に余分な説明は一切要りません。
それほど氏は自分の伝えたいイメージを完全に表現しきれています。
稚拙な感想ですが、この詩はかっこいい。
※ リンク先は『日本ペンクラブ 電子文藝館』
そのページの二番目の詩です。