井伏鱒二 『山椒魚』読了
2007年 03月 12日
(小学館文庫新選クラシックス 『多甚古村 山椒魚』所収)
著 者 井伏鱒二
発行所 小学館
発行日 2000年6月1日初版第一刷発行
Cコード C0192 (一般 文庫 ※日本文学詩歌)
内 容 体が大きくなり岩屋から出られなくなった山椒魚の心境
動 機 井伏鱒二が読みたくなったから (07/3/10の記事参照)
私の分類 娯楽
感 想 同じ本に所収されている『本日休診』も読み始めましたが、井伏鱒二、面白い
です。
面白真面目の極みというでしょうか。
ふざけてないですし、ユーモアを加えようというサービス精神とも違うし、ほのぼのして暖
かいのです。
筋がわかって何度も読みたくなるというのは、文体の魅力です。
かしこまった言い回しが真面目におかしいです。
蝦が笑い転げる場面も生真面目な表現で綴り、けして読者を笑わかそうとしている訳では
ないのですが笑えます。
キャッ、キャッという笑い声が聞こえそうです。
そしてラスト、蛙は実にいい奴だ。
この許すという気持ちはとても偉大だ。
神が人間を許したなどの大げさなものでもなく、先に降参した負け惜しみでもない、自分と
同じ頑固者という共感が許させた気持ちのよい許し方なのです。
そして山椒魚、「友情を瞳に込めて」というのがなんとも可愛い。
※ Cコードでいうと日本文学詩歌なのですが、内容は小説集です。