岸田今日子さん主演の映画『砂の女』をいつか観よう
2006年 12月 22日
岸田さんといえば、ムーミンの声、ナレーションなど独特の声と語りのうまさが強く印象に残っています。
逆に女優としてどんな役を演じられたのか、よく知らなかったのですが、ニュースで安部公房原作の映画『砂の女』に主演されていたことを知りました。
安部公房の小説『砂の女』は、わたしにとって大切な青春の書といいましょうか、忘れることのできない一冊です。
社会人になり、会社組織というものと折り合いをどうつけたらよいのか、混乱していた時期にたまたま読んだ本でした。
そして作品に衝撃を受け、このままでは主人公の男のようになってしまう、なってはいけない、と自分を奮い立たせたことを覚えています。
わたしは同じく苦しんでいた同僚にもこの本を勧めました。
彼女は普段小説を読む人ではなかったのですが、このときは本を読んでくれて、同様の衝撃受けたようでした。
わたしたちは作品の感想から、会社のこと、自分たちのことを徹夜で語り合いました。
そういう思い出と絡んでいるので、わたしにとっては娯楽としての小説ではありません。
そしてその思い入れの重たさからでしょうか、再び読んでみようという気持ちは未だに湧いてきません。
しかし岸田さんのニュースで映画なら観てみたいと思いました。
映画なら少し距離を置いて娯楽として眺められそうですし、岸田さんの怪演を観たい、あの話が、あの不思議な光景がどう映像化されたのか観たいのです。
岸田今日子さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。