『玉碗記』 よかったあ
2006年 12月 04日
(『井上靖集 新潮日本文学44』所収)
著 者 井上靖
発行所 新潮社
発行日 昭和44年1月12日発行
種 類 小説
内 容 安閑天皇陵から出土した玉碗を通して、男女の愛情の機微をみつめる主人公
動 機 『ペルシャ展』の講演会で聞き興味を持ったから (06/11/4の記事参照)
私の分類 楽しみ
感 想 久々にいい小説を読み、うっとりといい気分です。
井上靖を読むのは『天平の甍』以来で、学生か、20歳代前半の頃だったか、どちらにしろ
主人公がバタバタと動き回る推理、ミステリー、SFのジャンルに夢中だった頃のことなの
で、彼の文章の味がわかるには相当幼すぎました。
さて今回『玉碗記』を読んで、わたしが勝手に思い描いていた中国の紫禁城はたまた東大
寺大仏殿然とした難しい巨匠のイメージが覆り、実は大変なロマンティストであることがわ
かりました。
エッセイや解説によると若い頃から詩作に励んでいたそうですが、なるほど詩人の文章
です。
井上靖はこの作品から入ればよかったな。
いえいえ、短編であっさりした作品なので本当に面白く感じるには、正倉院のこと、ササン
朝ペルシャのことなどの予備知識がやはり必要。
そうでないとあっさり通過して忘れてしまうかも知れません。
難しく感じたことが記憶に残るのも縁、予備知識を得てこそ出会えるのも縁なのでしょう。
※ 06/12/14に続きの記事があります。