ニュートラルな気づき 


by honnowa
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『浅田真央 Book for Charity』 吉田順 5 究極のスケーター その1

「究極のスケーター」とはフィギュアスケーター浅田真央選手の夢です。
「究極のスケーター」とはどのようなスケーターなのでしょうか。
本書に書かれているフィギュアスケート関係者の言葉から探ってみようと思います。
内容に触れますので、まだ知りたくない方はスルーをお願いします。

初めにお断りしておきます。
本書の中には、試合を熱心に観続けた者にとっては現実とそぐわず、首を傾げたくなる箇所が幾つかあります。
著者はフィギュアスケート専門のライターではなく、今年の2月に出版された『浅田真央 さらなる高みへ』で初めて真央選手やフィギュアスケートについて取材をしたようです。(学研教育出版「広報ブログ」参照)
本書を読むと、素人である吉田さんが短い取材期間中に聞いた話を精一杯誠実に文章化したことがわかります。
頑張って丁重に書いてあると思います。
私の疑問の箇所は、あくまでISUや取材先に対してであり、けして著者を批判するものではありません。


P14、15、16より。
文章の後の〇数字は便宜上つけたものです。


日本フィギュアスケート界の重鎮で解説者の杉田秀男氏は、「ジャンプの矯正」は真央の挑戦の一部分にすぎないと語る。

フィギュアスケートのプログラムは、ジャンプを跳ぶ、スピンを回る、ステップを踏むなどの様々な技術要素が複雑に絡み合って作り上げられる。

それらの技術のすべてに、真央は一から挑戦している。杉田氏によれば、それらの技術の中でも最も大切なのは、スケーティング技術なのだという。

「スケートの基本っていうのは、やっぱり滑ること、すなわちスケーティングなんです。行きつくところに行きつけば、滑りの良さが、すべてを決します。今の真央ちゃんが挑戦していることの根本にも、高度なスケーティング技術の習得があります。佐藤さん(信夫コーチ)が大切にしているのも、まさにそこです」 ……①

たとえば、ブレードの傾斜角度を大きくする、いわゆるディープエッジ。これを身につけると、スケーティングのトップスピードが上がる。

スピードという課題は、真央自身、「強く意識し続けていること」の一つである。
「スピードを出すということは、信夫先生にも久美子先生にもよく指導されますし、乗り越えなければならない課題だと思っています」

助走スピードが上がれば、より高くジャンプを跳ぶこともできるし、飛距離も伸びる。回転も速くなって、着氷も楽になる。 ……②

助走スピードをスピンの回転速度に変換すれば、回転スピードが上がる。スパイラルでも安定感が出て、ポジションをキープしやすくなる。 ……③

それにスケーティングの技術が上がれば、それだけエネルギーのロスが少なくなる。体力を温存できるから、後半の演技でもエレメンツを楽にこなすことが出来るようになる。 ……④

(ジャッジ、解説者の)藤森氏は、「エッジをさらに上手く使えるようになれば、表現の幅も広がる」と語る。
「スケーティングは、フィギュアスケートにおいて最も大切な表現ツールです。エッジワーク技術をさらに上手く使えるようになれば、より深く、幅を持って、曲の持つ魅力や、そこから受け取った自分の感情を表現できるようになるんです。つまり、真央ちゃんの良さが、もっと引き立つようになる」 ……⑤

ただ藤森氏によれば、高度なエッジワーク技術の習得は、そう簡単ではないという。たとえばディープエッジなら、ブレードとともに傾いた体を支えるため、足首とひざを柔軟かつ緻密に使いこなして、バランスを保たなければならない。

「完成度の高いエッジワーク技術の習得には時間がかかります。どんなすごいスケーターだって、時間をかけて円熟させていく必要があるんです。このことは、真央ちゃんも例外ではありません」

そのことは、真央にもよく分かっていた。
「決して簡単ではないし、時間がかかることも分かっていました。でも、やっぱり挑戦したい。教えてもらったことを、少しでも試合に生かしたいと考えていました」


 そのとおりだと思います。でも現実の試合の採点では特に女子で、どうしてこの人のSSが高いのか不思議な人がいますよね。
それとこの発言を裏返せば、「浅田選手はまだまだ高度なスケーティング技術を習得しなくてはならない」ということになりますが、現状でも十分高いスキルを持っているのに、プロが理想とする高い技術とは果たしてどのようなスケーティングなのでしょう。

 浅田選手はスピードが速くないと指摘されることがありますが(本当に遅いのかどうかは知りません)、彼女は高く跳ぶジャンプで、早く回転しています。
ジャンプの上手さで定評のある安藤選手はハイジャンパーではありませんし、スピードが売りの某メダリストは幅跳びジャンプです。
ジャンプと言えばやはり往年の伊藤みどり選手が思い出されます。
彼女は助走のスピードは速く、ジャンプの高さも幅も男子並でしたが、回転はゆっくりでした。
現在の採点では着氷後の流れが重視されており、結局回り切って流れるかどうかであり、ジャンプそのものは選手の体型や筋力、くせなどで個性が分かれるところで、一概にスピードがあればいいものでもないように思います。
スピードが高く評価されている男子チャンピオンは、シーズン前半転倒ばかりしていましたが、あれはむしろスピードがありすぎて制御できていませんでした。
世戦で転倒しなかったのは、スピードをこれまでよりセーブしていたからです。

 浅田選手はスパイラルは既に抜群の安定感、美ポジキープ力があります。
むしろFS「愛の夢」のラストは、助走もなく6秒間キープと小回り周回をやってのけました。
これぞ柔軟性と筋力、そしてスケーティング技術の賜物でしょう。

 これを読むと浅田選手は現状でも十分スケーティング技術が高いことになりませんか。
今年の世戦のみ残念でしたが、09-10シーズン、10-11と彼女は体力のいるフリーの後半で男子並のステップをこなしました。
ジャンプの成否はともかく、スタミナ切れや体力不足は微塵もなく、女子選手では最もタフです。

 この箇所に当てはまるのは、高橋選手とコストナー選手ぐらいしか思いつきません。
TOP選手でも当てはまらない人が多い。
曲の持つ魅力や、そこから受け取った自分の感情表現が素晴らしいのは、プルシェンコ選手と安藤選手ですが、2人ともエッジワークを絶賛されているのを聞いたことはありません。
エッジワーク使い№1の男子と女子選手は、果たして豊かな表現者なのでしょうか。
男子は難しいプログラムをこなせる技術者だと思いますが、私には彼の演技は一本調子でつまらない。
女子は何をやってもワンパターンで有名ですよね。
世戦SPでは有名な原作がある曲を採用しながら、結局いつもの表現力でした。

プロが考える理想のスケーターは、採点という現実問題と乖離しているように思えてなりません。
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by honnowa | 2011-07-10 21:50 |