小田島雄志訳 『ハムレット』読了
2009年 09月 13日
(シェイクスピア全集)
著 者 ウィリアム・シェイクスピア
訳 者 小田島雄志
発行所 白水社
発行日 1983年10月10日第1刷発行
1993年9月10日第14刷発行
Cコード C0297 (一般 新書 外国文学小説)
内 容 デンマークの王子ハムレットの苦悩と悲劇
動 機 沢田研二主演の音楽劇「ACT SHAKESPEARE」に触発されて
私の分類 娯楽
感 想
面白くて、一気に読めてしまいました。
チェイクスピアの戯曲を読みきったのが初めてならば、戯曲を楽しく読書したのも今回が初めてです。
文芸の中でどうにも戯曲は苦手分野で、シェイクスピアは若いころから何度もチャレンジしようとしたもののしょっぱなから挫折しました。
小田島雄志さんの訳ではなかったですけどね。
今回読もうと思ったのは、ジュリーが音楽劇の中で『ハムレット』や『リチャード三世』の台詞を言うシーンがあり、テキストで台詞を確かめたかったことと、そのジュリーの台詞回しをイメージすれば全編読めそうな気がしたからです。
で、実際に読めてしまいました。
これは戯曲を読むコツの一つですね。
脳内で再生した声を聞きながら読むという具合です。
その時に自分の好きな役者さんの声や言い方を再生させればよいわけです。
『ハムレット』は悲劇的なテーマとは裏腹に、台詞は諧謔に満ち、二人で会話する箇所はまるで漫才のやりとりのようでした。
とりあえず「悲劇的」と書いてみたものの、それは『ハムレット』がシェイクスピアの四大悲劇の一つであり、最後には死んでしまうからなのですが、愉快な台詞回しのおかげで、喜悲劇というほうのが似合うように思いました。
ハムレットって、もっと苦悩する憂鬱な人物でなかったでしたっけ。
これは後世の舞台や映画が作り上げたイメージだったのかもしれません。
本書は悲劇がこれでいいのかしらと思うくらい言葉遊び的なのですが、まあこれが所謂英国的ユーモアというものなのでしょうし、小田島さんがそういう面を生かして訳したということになるのでしょう。
さすればハムレット役者はハンサムでないといけませんね。
普通の人が演じると漫才になりかねず、コント『ハムレット』になってしまいかねません。
かつて作詞家の阿久悠さんがジュリーのことを、いい男だとわかっているから安心して無様な男の詞が書ける、他の歌手ならばかっこいい詞の力によってその歌手をより素晴らしくいい男に見えるようにした、と語っておられました。
主役でデンマークの王子という設定だけで、自ずと若くてハンサムな青年という像になるのかもしれませんが、もしかしたら当時シェイクスピアの周りにも雰囲気の良い魅惑的な俳優がいて、だからこのような台本が書けたのかもしれないと想像するのです。