『田渕俊夫展』
2009年 02月 24日
昨日は『田渕俊夫展』(名古屋栄三越)を観てきました。
わたしがこれまで観たことがある田渕さんの作品は、墨の輪郭に緑色の彩色で植物を描いた作品群で、端正で美しいのだけど、少し寂しい絵という印象でした。
今回は人の勧めもあり行って来たのですが、一服のおいしいお茶をいただいたような清々しさを味わってきました。
田渕さんの作品をまとめて観るのは、今回が初めてなのですが、上記のような画風ばかりでなく、同時にさまざまな描き方にもチャレンジされておられますし、好みの絵を見つけることもできました。
何事も先入観を持たずに観るものですね。
圧巻は墨のみで描かれた永平寺や鶴岡八幡宮の襖絵でした。
田渕さんらしい端正さと繊細さが大画面にダイナミックに展開されています。
よかった~
沿って歩くと深い木立の中を散策しているような気分になれました。
月が描かれている絵では、天に昇る本物の月を眺めているようかのようでした。
襖絵らしい自然のものを描く一方で、新しい表現方法や現代的なモチーフにも挑戦されているのが面白かったです。
例えば2000年には、大通りを夥しい数のオートバイが疾走する現代のベトナムらしい光景を描いた作品があります。
場内のビデオで紹介されていたお話ですが、その絵のオートバイ群を描くために新しい技法を編み出し、また敢えて色を付けずに墨のみで描きました。
その絵が好まれるかとか、田渕さんらしいかとか絵の評価については意見が分かれるところだと思いますが、そのモダンな絵をきっかけに、色彩を付けずに墨のみで表現することに目覚め、襖絵の墨絵につながっていったということですから、何事もやってみるものですね。
人生は一生勉強だと感じ入りました。
さて、わたしが気に入った作品は『春もよい』(2007年)、『熱砂の道』(1999年)、『出港』(1996年)など、暖色系の色彩豊かな作品たちでした。
名古屋展は終了しましたが、3月20日より福岡展が行われます。
詳細はこちらをご覧ください。
『NHKプロモーション』より 『画業40年 東京藝術大学退任記念 田渕俊夫展』