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ニュートラルな気づき 


by honnowa
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沢田研二さんについて思うこと 7 源氏物語

1980年1月3日、沢田研二さんはテレビドラマ『源氏物語』で光源氏役を主演しました。(※1)
どういう時期の沢田さんかといいますと、同じ年の元旦に『TOKIO』を発表しています。(※2)
当時、最先端ミュージックだったテクノポップと世相を意識し(※3)、世間をあっと言わせたあのびっくりセット付き衣装と光源氏。
ジュリー、芸の幅が広い~
でもあの電飾ネオン+パラシュートを、お笑いにせずにかっこよく見せてしまうのですから、平安貴族の装束くらい着こなせないはずがありません。
31歳のジュリーの表情に、若いころの愛らしさはなくなりましたが、その代わりにクールな翳りが現れてきます。
この時期以降のジュリーを、歌番組でない映像でもっとよく観ておけばよかった。

さて今日の記事は、この頃の沢田さんや主演のドラマのことでなく、文学としての『源氏物語』とタイガース時代の可愛らしいジュリーを絡めてみたいと思います。

You Tube には、タイガース時代の動画や画像がたくさんUPされています。
そのころのジュリーの可愛らしさときたら。
当時の少女たちが熱狂した気持ち、わかります。
わたしは当時のことは知りませんので、そのころからジュリーを支持し、今日までお宝を大切に保存し、勇気を奮って公開されている熱心なファンの方々に本当に感謝しています。

後年の特集番組で吉田建さんが、紅白歌合戦で『時の過ぎゆくままに』を歌うジュリーを視て(※4)、その美しさを「誰でも好きになっちゃう」と表しましたが(※5)、タイガース時代のジュリーこそは「誰でも好きになっちゃう」可愛らしさです。

あまりの可愛らしさに、パソコンに向かって「ラブリ~!」と叫んでしまうのですが、その時に『源氏物語』についてのある文章を思い出しました。
それは、光源氏は幼少のころ、とても可愛かったというものです。
どれくらい可愛かったかというと、桐壺帝の寵愛を独り占めしたために源氏の母親を憎んでいた弘徽殿の女御でさえ、すげなくできなかったほどです。
弘徽殿の女御からすれば、源氏は自分の息子のライバルでもあり、一時は東宮の座も取られかねないと危惧していました。
ですから本来は可愛いと思うはずがない。
それでも構わずにほおっておくことができないほど、源氏は可愛かったのです。
そしてそれくらいに可愛いく魅力がなければ、後ろ立てのない子供が宮廷で生き延びられるはずがないというものでした。
読んだ資料がみつかりませんので、出典を挙げることができません、ごめんなさい。

では円地文子の口語訳でこのあたりを読んでみましょう。
『源氏物語 巻一』(新潮文庫)より P37

  たとえ荒くれ武者や仇敵であっても、この御子を見ては、思わず微笑まずにはいられない
  御様子なので、さすがの女御もすげなく構いつけずにはお置きになれない。このお方のお
  生みになった女御子がお二方いらっしゃるけれども、若宮のお美しさには及びもつかな
  かった。

平安時代は母系社会です。
通常子供は母親の家で育てられます。
しかし源氏は幼いころに母親を、そして唯一の後ろ立てだった祖母も続けて亡くしたため、誰も育てる人がいなくなり、宮中に引き取られます。
これは異例のことです。
帝は、弘徽殿の女御が生んだ一の御子よりもこの子をと思うのですが、様々に慮って、結局は一の御子を東宮にします。
このような状況では普通は何が起こるでしょうか。
ぶっそうな言い方ですけど、消されますよね。
古今東西の宮廷史上、よくあることではありませんか。
子供のことなので、事件が歴史の表に出てくることは少ないですが。

紫式部はノンフィクション作家ではないので、そのようなお話しにはしませんでした。
そこまでリアルに書いてしまっては、読者がつかないどころか、宮使いクビです。
でもそれならば、並みの作家ならば継子いじめの物語にしたのではないでしょうか。
継子いじめの物語も世の東西を問わず、たくさん創作されています。
『落窪物語』・『白雪姫』・『シンデレラ』etc
その方が王道といいますが、物語の常套手段です。
源氏のようにそのような状況に置かれながらも、それらをいっさい寄せ付けない設定の方が珍しい。
物語を、普通では思いつかないようなストーリーに進行させるために、紫式部は光源氏を輝くばかりに美しく、女の子よりも愛らしくしました。
ということは、光源氏は白雪姫よりも可愛かったのです。
あのディズニーの描いた可愛らしい白雪姫でさえ、継母からいじめ抜かれ、あげくに毒殺されかかりました。
弘徽殿の女御もそこまでしてもおかしくない状況だったにもかかわらず、彼女は幼少時の源氏をいじめることはできなかった。
(源氏が大人になってからはやりましたけど)

では白雪姫よりも可愛いとは、具体的にどういう容姿なのでしょうか。
そこでタイガース時代のジュリーです。
女の子よりも可愛い!
しかもただ可愛いだけではだめなのです。
大切なのは、見飽きない可愛さ、過ぎない美しさです。
過度の美貌は鼻について、却って嫌われるもとです。
「美人は3日見たら飽きる」という表現がありますが、それもまただめです。
飽きられたらおしまいですもの。
人気家業のジュリーも、後ろ立てのない光源氏も。
芸能界でゆるぎない地位を築くまで、または6歳で宮中に引き取られ、12歳で元服して左大臣家の姫君と結婚して強力な後ろ立てを得るまでは、ジュリーも源氏もその魅力的な容姿で切り抜けてゆきます。
そういう運命を力強く切り開いてゆく伸び盛りの愛らしさ、女の子よりも可愛らしいという点で、わたしはタイガース時代のジュリーを幼少期の光源氏と重ねてみるようになりました。


  《出典》
※1 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より 『沢田研二』

※2 前掲より 『沢田研二の作品』

※3 YMO シングル『テクノポリス』 (1979年10月25日)
          〃  『ライディーン』 (1980年6月21日)
   前掲より 『イエロー・マジック・オーケストラ』

※4 You Tube で「沢田研二」と検索すると、最も再生回数が多いのが(09/01/02現在)
    この動画です。
   http://jp.youtube.com/watch?v=M4O1di7fmW8

※5 You Tubeより http://jp.youtube.com/watch?v=XX3it5stkqk 


  《参考文献》
『源氏物語のテーマを探る ─母のない娘、娘のない女、紫の上の場合─』 
  (河地修 東洋大学通信教育部学友会)
by honnowa | 2009-01-02 16:38 |